借地権の
建物買取請求権とは
借地権の建物買取請求権とは 要点10秒解説
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建物買取請求権は地主が更新を認めないときに権利行使できる
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建物買取請求権は「形成権」のため意思表示で売買成立
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建物買取請求権には建物・庭木・石垣・門扉・塀などが含まれる
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建物買取請求権には家具・家電・什器などは含まれない
借地権買取対応エリアは1都3県になります。
一部エリア内でもご希望に添えない可能性があります。
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借地契約の満了後に建物がなくなれば、マイホームやアパート建築などができます。新しい生活を始めたり、新たな事業で収入源を確保できたりするため様々な活用方法が選択可能です。
しかし、借地契約満了時に借地人により「建物買取請求」が行なわれるケースがあります。
建物買取請求権が行使されれば、買取費用や解体費用などが必要になるため金銭的な負担が大きいです。
借地として土地を貸している地主のために「建物買取請求権の仕組み」について詳しく解説します。
また「買取請求権が認められる2つの理由」や「買取請求権が行使できるケース・できないケース」についても紹介するため、借地の活用方法に悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
建物買取請求権とは「建物の買取り」を求められること
借地契約満了後は、借地人が建物を解体して更地で返還するのが一般的です。
しかし、建物がまだ利用できる状態などの場合、借地人は地主に対して借地権付き建物を買い取ってもらえるように請求する「建物買取請求権」が認められています。
つまり「借地契約を更新しないなら建物を買い取ってください」という請求で、借地契約が満了した場合などに借地人が行使できる権利です。
【注意】借地権の更新を認めない場合に請求される
建物買取請求権は、借地人が借地権の更新を希望しているのにもかかわらず、地主が更新を認めない場合に行使できる権利です。
そのため、借地人の事情による「契約更新の拒否」や「借地権を解除しようとする場合」などには、建物買取請求権の適用がありません。
さらに、借地人が債務不履行により地代を支払わない場合や、借地契約の期間中に双方の合意で契約が解除された場合なども同様です。
つまり、借地人の事情により「契約更新の拒否」や「借地権の解除」などを行う場合には、建物買取請求権の適用がありません。
建物買取請求権は拒否できない
借地人から建物の買取を請求された場合、基本的に拒否はできません。
すべての条件に当てはまるわけではありませんが、借地人が契約の更新を希望していているにもかかわらず、地主の正当な理由で借地契約が終了する場合などには、請求に応じる必要があります。
この内容は、借地借家法第13条に示されています。そのため、借地契約に「借地契約が終了しても、借地権者(借地人)は借地権設定者(地主)に対して建物買取請求権を行使しない」という内容を取り決めても「無効」となるため覚えておきましょう。
建物買取請求権による買取価格は「時価」になる
借地借家法第13条1項に記載があるように、建物買取請求による買取価格は「時価」となります。
時価とは、買取を行う時点での建物自体の価格のことです。
建物の建築費用から耐用年数を基準として、経年分の減価額を控除して算出します。
さらに建物の時価と合わせて、所在地や周辺環境などの「場所的利益」などを合わせて買取価格を算出する方法が一般的です。
ここでの場所的利益とは「駅近」「都心」「良い日当たり」などを指します。
なお、土地と建物は別々に評価するため、借地権の価格は建物の時価には含めません。
参照:e-Govポータル 借地借家法第13条
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建物買取請求権が認められる2つの理由
建物買取請求権という権利ができる前には、簡単に借地契約の契約解除が行われていました。
そのため、借地人の立場が弱かったことにより作られた権利だと言えます。
ここでは、借地人からの建物買取請求権が認められる「2つの理由」を詳しく解説します。
借地人保護のため
昔から地主と借地人との間にはトラブルが付きものでした。
それは土地を貸す側の地主の方が圧倒的に立場が強いからです。明治初期は、地主と借地人との権利関係を規律する法律がまだなく、民法の「所有権絶対の原則」をもとに、地主が借地人を簡単に追い出すことが可能でした。
また、日露戦争などの戦争特需により地価が高騰していたため、それが更に拍車をかけていました。
そのような状態が暫く続いていた中、横暴な地主から借地人を保護するために、借地権に関する法律が大正10年に、現行の借地借家法の大本となる「借地法」「借家法」が制定されました。
建物買取請求権は、「借地法」から現行法の借地借家法に引き継がれており立場の弱い借地人を保護するためにできたと言われています。
借地人は多額の資金を投下して建物を建築しているため、その費用回収の機会として与えられています。借地人を保護するための非常に強い権利です。
建物の利用が可能であるため
建物の利用が可能な状態であれば、建物買取請求権は認められます。
十分生活できたり、リフォームして再利用できたりする状態であれば、取り壊すのが勿体ないからです。
さらに、利用可能な建物を取り壊すことは「社会的な経済損失」になると考えられています。
個人の社会的生活が被る損害を軽減するために、地主様による買取を促している権利です。
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建物買取請求権を行使するための4つの条件
- 借地権者が買取請求権行使を意思表示している場合
- 借地上に建物がある場合
- 借地権の契約期間が満了している場合
- 地主側に更新しないことに正当な事由がある場合
行使するためには、4つすべての条件を満たすことが必要です。
建物の利用が可能であるため
借地人から建物買取請求権行使の意思表示があれば、基本的には応じなければいけません。
この場合、地主に承諾したり拒否したりする権利はないため注意しましょう。意思表示は、口頭でも書面でも可能です。
しかし電話連絡などの口頭での意思表示の場合、あとでトラブルになる恐れがあります。
万が一借地人が口頭で連絡してきた場合でも、書面で表示するように促すのがおすすめです。
例えば、配達証明がついている内容証明郵便が良いでしょう。
内容証明書なら文章の内容や差出人などを証明する扱いになるため「言った・言ってない」で揉めることが少ないです。
しかし、建物買取請求権は「形成権」になっているため、借地権者が権利を行使することで地主との間で売買契約が成立するのと同一の効果が発生します。
つまり、建物買取請求権行使の意思表示があった時点で、地主と借地人との間で事実上の建物売買契約が成立となります。
建物買取請求権行使による双方の義務 | |
---|---|
借地人(売主) | 建物引渡義務 |
地主(買主) | 代金支払い義務 |
借地人からの建物買取請求権行使の意思表示には、速やかな対応が必要です。
借地上に建物がある場合
借地上に建物が存在していれば、建物買取請求権の行使ができます。対象は建物だけでなく、以下の付属物も含まれます。
- 庭木
- 石垣
- 門扉
- 塀
ただし、家具家電や什器などの備品は含まれないため注意しておきましょう。なお、借地上に建物が存在していれば良いため、築年数や居住しているか否かは問われません。
とはいえ、以下のような状況の建物であれば、後述する「地主側にある更新しないことの正当な事由」になり得ます。
- 建物が腐敗して屋根が落ちている状態
- 火災で焼け落ちている状態
- 地震により激しく傾いていて修復不可の状態
これらの状態は「人が住めるに値しない」と判断される可能性が高いでしょう。
借地権の契約期間が満了している場合
建物買取請求権が行使できるのは「借地権の契約期間が満了しており、かつ更新がないこと」です。この場合、行使までの流れは以下のようになります。
- ① 借地権の契約期間満了
- ② 地主による契約更新拒否
- ③ 建物買取請求権行使
そのため、契約期間中や契約更新する場合は請求できません。なお「借地権の契約期間が満了しており、かつ更新がない」というケースにより建物買取請求権が行使できるのは、以下の3つが該当します。
建物買取請求権が行使できるケース | |
---|---|
借地契約の満了 + 借地人からの更新請求なし | |
借地契約の満了 + 借地人からの更新請求なし (ただし契約期間満了後に借地人の土地使用に意義を述べて正当事由により借地契約更新を拒否する場合) |
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● 借地契約の満了 + 借地人からの更新請求あり (ただし正当事由により借地契約更新に意義を述べる場合) |
この3つのケースの場合は建物買取請求権が行使できるため、覚えておきましょう。
地主側に更新しないことに正当な事由がある場合
地主側が借地契約を更新しない正当な事由には、以下のようなものがあります。
- 地主自らが土地を自己利用する場合
- 土地の再開発や再利用をする場合
- 建物が老朽化している場合
借地契約が満了になり、更新しないことに正当な事由がある場合は、借地人による建物買取請求権の行使が可能です。
なお、借地契約の期間を定めずに更新する場合の契約期間は、旧法と新法で更新後の期間が以下のように短縮されています。
参考までに比較してみましょう。
旧法 | |
---|---|
堅固 (RCなど) |
60年 |
非堅固 (木造など) |
30年 |
新法 | |
---|---|
堅固などの 区別なく |
1回目の更新 20年 |
2回目以降の更新 10年 |
地主が契約更新を拒否(契約を解除すること)しても、借地人が契約更新を希望する場合があります。地主の正当な事由で契約が終了した場合は、建物買取請求権が行使可能です。
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建物買取請求権が行使できないケース
ここでは、建物買取請求権が行使できない以下の4つのケースを解説します。
- 借地権の契約期間が満了していない場合
- 契約違反などによる解除の場合
- 定期借地権の場合
1つでも該当する場合、借地人からの建物買取請求権ができません。
借地権の契約期間が満了していない場合
建物買取請求権は、借地権の契約期間中には行使できません。借地契約が満了となり、地主自身が契約更新をしない場合に行使できるからです。
契約期間が満了する前による借地契約の解約は、借地人の都合になります。
例えば、急な転勤や海外赴任などで引越しが必要になった場合などです。
やむを得ない事情があったとしても、借地権の契約期間中に建物買取請求権の行使はできません。
契約違反などによる解除の場合
債務不履行による契約違反があった場合、地主は借地契約の更新を拒否できます。契約違反行為は、以下のような内容です。
- 地代の支払いを滞納している
- 無断で借地権を第三者に譲渡した
- 契約内容に反して土地を利用した
借地人が契約違反をした場合、地主が契約を解除する「正当な事由」に該当します。この場合に契約解除となれば、借地人による原状回復義務が与えられて、更地で土地がを返却されます。
更地にすれば建物がなくなるため、建物買取請求権の行使ができません。
土地賃貸借契約を合意解除した場合
建物買取請求権は、借地人が更新を希望しているにもかかわらず地主が認めない場合に行使できるものです。
そのため、地主と借地人の合意による解除を行った場合は買取請求権を行使できません。
つまり「借地契約を合意解除する代わりに建物を買い取ってください」という主張を受ける必要がないため知っておきましょう。
定期借地権の場合
定期借地契約とは、定められた期間で借地契約することです。
期間満了により契約が終了するため、契約更新は不可となります。
また、定期借地権の中でも「一般定期借地権」「事業用定期借地権」の場合は建物買取請求権を行使できません。
この2つの契約の場合、原則土地を更地にして返還する決まりになっているからです。
しかし、契約書に建物買取請求権の記載がない場合、請求権自体の争いとなります。
正当な建物買取請求権の行使がされたら地主は拒否できないため、知っておきましょう。
借地権買取対応エリアは1都3県になります。
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借地契約がない場合は早めに作成しておく
一般的に、借地権の契約は書面で交わします。
しかし昔から借地人が、何代にも渡って借地を利用している場合には、借地権の契約書を書面で作成していないケースがあります。
定期借地権が施行されていない1992年以前の契約であれば、契約書がなくても建物買取請求権を行使できる場合があります。地代の振込履歴や登記簿謄本など「賃借の証拠」があれば立証が可能です。
しかし契約内容があいまいだと借地人との間でトラブルになった場合、基準となる決まりごとが分からなくなります。土地を利用し始めた時点での法令に沿った内容で、契約書を作成しましょう。
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借地契約満了時に更新しない場合、借地人より建物買取請求が行使されれば基本的には応じなければいけません。
この記事で解説した「買取請求権が行使できるケース・できないケース」を理解しておく必要があります。
とはいえ、専門的な知識が必要になるため不安な点も多いでしょう。
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